好きな人の声は聞こえない

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触れるとその人の心の声が聞こえる?・・・なんで? どうしたんだろう?? もしかしたら、頭を打ってこんな能力が・・・恵は医師や見舞の人たちで試してみた。 やはり、触れると聞こえる。その人の着ている洋服に触れても聞こえる・・・ ・・・怖い・・・でも・・・使えるかもこの能力・・・ 3日ぶりに会社に出社した。 皆が大丈夫? と声をかけてくれた。いつも気に入らない同僚も声をかけて来たので、例の能力を使ってみようと思った。 「あら、お怪我されたと聞いたけど、もうよろしいの? 」 わざとらしい挨拶を受けた。 「ありがとうございます。お騒がせしました。あっ、糸くず・・・取りますね。」 “ざまーみろ、どんくさいんだよお前は。” ・・・声が聞こえた・・・ やっぱりね、この人顔は優しそうだけどこんなこと思っているんだ。 「私、どんくさいので・・・」 そう答えると、驚いて同僚は「お大事に」と言って慌てて行ってしまった。 ・・・さーてと、どう使おうこの能力・・・ おつかいを頼んだ野村君が声をかけて来た。 「吉良さん、大丈夫ですか? 僕がお願いしたおつかいだったから・・・心配しました。」 「大丈夫です。少し頭を打っただけです。ご心配おかけいたしました。」 「あー大したことなくて良かった。僕、吉良さんいないと仕事進まないし・・・あのでも、当分は無理しないでくださいね。」 「はい、ありがとうございます。」 「そう言いながらすみません。早速なのですが、これプレゼン用参考資料です。うちのグループのプレゼン資料を作る為の打ち合わせが明日から開始されます。目を通しておいてください。お願いします。」 野村は恵に資料を差し出した。恵は野村の指に手が触れるようにして資料を受け取った。 “あー、ホント大したことなくて良かった・・・” ・・・野村君は、表裏の無い良い人ね・・・
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