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「うーん……教室ではまだ、難しいというか」
「勇気が出ない感じ?」
「……うん。知らない人ばっかりだし」
知らない人ばかりの高校を選んで受験したのは私なのだけれど。そんな矛盾を心のなかでつぶやく。
「まぁ、でも、わかるっちゃーわかるかな。俺も中二の二回目のとき、後輩とはいえ知らないヤツばっかりだったしな」
「あ……」
そうか。坂木くんも似たようなことを経験しているんだった。
「でも、俺、人間欠乏症みたいになってたからさ、それよりしゃべりたい欲のほうが大きくて」
「人間欠乏症……」
「そう。入院中とか療養中、本当に暇だったし、家族以外と会えなくて寂しかったんだよね。病気とか薬の副作用でキツかったのもあって、だいぶネガティブにもなってた。そういうとき、やっぱり人と話したいなって思ったんだ。人と会って面と向かって会話をして、バカなことを言って笑い合ったり、自分の知らないことを教えてもらったり、意見交換したり」
私は、ゆっくりとうなずいた。坂木くんはいつもと同じトーンで話しているけれど、入院中にたくさん大変なこと、考えたことがあったのだろう。
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