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「だから、次はお前の家にでも遊びに行くわ。
広子と一緒に」
そう言う成瀬に、ナツキは呆れたように、ため息を吐いた。
「あー、俺の部屋10階なんですけど、
下はコンクリートだし、そっから飛んだら今度は確実に死ねると思うし。
ぜひぜひ、遊びに来て下さいませ」
「あ、じゃあ、持ちきれない程練炭手土産に持って、ナツキの家に遊びに行くわ」
そんな二人のやり取りに、
真ん中の私はハラハラとしてしまう。
一触即発の感じ。
けど、二人は同時に吹き出して、笑っていて。
私だけが笑えなくて。
「お互い、死ななくて良かったよな?」
「そうですね」
そう笑い合う二人には、私には入り込めない独特の空気がある。
「そういえば広子、体大丈夫なの?」
そうナツキに訊かれ、頷いた。
「もう最近は、病院にすら通ってない」
油断は出来ないけど、
私は病気を克服した。
夜もしっかりと眠れているし、
食欲もある。
発作もない。
「そっか」
そう笑うナツキは、私の体の事はずっと気がかりだったのかもしれない。
そして、それが解消された今。
本当に、この人の中の私の事は完全に終わったのだと思った。
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