最終章

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「ナツキさんの去年のクリスマスの復活劇知ってる?」 そう問い掛けられるけど、 そのクリスマスの日にナツキと別れた私が、知るわけがない。 「あの日本当に凄かった。 店に入れないくらいにナツキさんの客で溢れてて。 その階段の上の方迄、店に入れない客が並んでて。 あの日、店の中の酒が全部無くなって、慌てて手の空いてるホストが、買い出しに走って。 ほんと、凄くて凄くて!」 そう語る須田は、テンションが高くて、その日が凄かったのは分かった。 「その日だけで、俺の12月のその日迄の売り上げなんかゆうに超えて! その日だけで、この店のナンバーワンに舞い戻って」 ‘ーー昔はナンバーワンになるのに3ヶ月かかったけど、 今の俺なら3日あれば充分だしーー’ そう言っていたけど、 それを1日で実行したんだ。 凄い、というより、なんか怖い。 「やっぱり、ナツキさんは凄いよなぁ」 そう目をキラキラさせて語る須田は、とても嬉しそうで。 以前、ナツキを潰したいって言っていたのが嘘みたいで。 あー、なんか、男の人のこんな感じが、よく分からない! 「あのさ、訊きたいんだけど、 この店でドンペリのプラチナって一体いくらするの?」 恐る恐るそう訊いた私に、 「えっ?プラチナは、一本80万」 そうサラッと言った須田に、 私は心臓が止まるんじゃないかってくらいに驚いた。 高いとは思っていたけど、そんな80万もする物で、 それを10本も、ポンって奢ってくれたナツキって…。
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