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そして、私の21歳の誕生日の今日。
7月23日。
成瀬は仕事を休んでくれていて、
Y駅でいつものように待ち合わせをする。
時は、昼の12時。
お互い実家の私達は、そうやって中間の駅で待ち合わせる。
駅から出てすぐの有名なドーナツ屋さんの前で、
成瀬を待つ。
「あ、悪い。
ちょっと遅れた」
そう言って、少し急いでくれたからか、額に汗をかいている。
日常生活には支障はないけど、あの飛び降りた時の右足骨折の後遺症で、
以前みたいに、成瀬は走ったりは出来なくなった。
気にしてみると、その歩き方も、ほんの少し違和感が残った。
知らないと、分からない程度だけど。
「これ」
なんの前触れもなく、そう突き出されたそれは、
有名なアクセサリーブランドの紙袋で。
私は、え、とそれを受け取る。
「あんま給料高いわけじゃないから、
前みたいに、そんないいのは買えなかったけど」
その言葉で、そのプレゼントが何なのか分かった。
それを取り出して、包装を解き、
そのケースを開けると、
指輪が出て来た。
成瀬はそのシルバーのリングを手に取り、
私の左手の薬指に嵌めてくれた。
「やっと、ちゃんと指輪をプレゼント出来た」
「そうですね」
その私の手の指輪を見て、そう笑い合う。
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