若者はコーヒーと一緒に

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「あぁ、こんにちは。今日はお休み?」 「休みっていうか、今は春休みなんで、毎日が休みですね」  有川さんはそう言うと、満面の笑顔を見せてくれた。  かわいい。キラキラしている。輝いている。あまりの眩さに、一瞬くらりとする。 「実家から通ってたんですけど、けっこう遠くて。だから思いきって、一人暮らししようと思って、親にねだりました」  こんないたいけな女の子が一人暮らしとは。おじさんは心配だ。とても。 「天野さん、コーヒー好きなんですか?」  俺の心配をよそに、有川さんはテーブルにあるタンブラーに視線を向けていた。 「うん?あぁ、よくわかんないんだけど、香りは好きだね」  突っ込まれると答えられないので、コーヒーに関する自分の無能を、正直にさらす。 「有川さんはコーヒーとか飲むの?」  俺は会話のついでに尋ねた。 「ドリップは飲むんですけど、天野さんみたいに豆を挽いたりはしないですね」 「豆から挽くって…なんでわかるの?」 「だって、いつもガリガリ聞こえるし、すごくいい香りがしてますもん。ドリップとはまた違った香りが」  有川さんは笑顔でそう言った。  まずい。やっぱりかわいい。
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