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「あぁ、ちょっと待ってて」
俺は急いで部屋に戻り、戸棚からパックされたコーヒーを取り出した。
「これ、あげるよ」
俺が彼女に差し出したのは、豆を挽いてもらった粉末状のドリップコーヒー。
「えー!そんな…いいです」
「いや、いいから。一回飲んでみてよ。気に入らなきゃ捨てていいから」
俺は半ば強引にコーヒーの袋を彼女に渡した。彼女は遠慮しながらも、そのコーヒーを受け取った。
「いいんですか?こんな高級なものを…」
「いいよいいよ。別に高級品なんかじゃないから」
俺は笑顔で言った。その笑顔は輝いていただろうか?
「ありがとうございます。大切に飲みます」
有川さんは大事そうにコーヒーを抱きしめ、頭を下げた。
俺はその姿を確認して、右手を上げた後、部屋へと戻った。
うん。いい子だ。何よりかわいい。
俺は有川さんの笑顔を思い浮かべながら、タンブラーに残ってるコーヒーを飲み干した。
豆から挽いたモカ・イルガチェフは、冷めても旨かった。
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