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「どうしたの?」
俺は玄関の扉を開けると、開口一番、そう声を掛けた。
「夜分にすいません。あの、これ…」
有川さんは紙袋を差し出した。うん。今日の有川さんも、やっぱりかわいい。
「これって…ゲイシャじゃないの!?」
中身を確認して、俺は驚きの声を上げた。
『ゲイシャ』は、コーヒーの中でも値の張る、なかなか手の出せない代物だ。
「はい。この前のお礼に。天野さんは豆のままでよかったですよね?」
俺が頷くと、彼女は安心したように息を1つ吐いた。
「よかった。コーヒーのことは全く分からないから、一番いいやつにしました」
戸棚にあったドリップ用のコーヒーをあげただけなのに。俺はあげたコーヒーと、今もらったコーヒーを比べ、急に恥ずかしくなった。
「ごめんね。何か気を遣わせちゃって…。全然不釣り合いな贈り物をしちゃったね」
俺は頭を掻いた。有川さんは首を横に振ると、安心したように笑った。
「よかった。やっぱり一番いいものが間違いないですよね。また感想聞かせてください」
有川さんはそう言って一礼し、自分部屋へと帰って行った。俺は手を振りながら、その後姿を見送った。
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