おじさんと若者はゲイシャで繋がる

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 次の日曜日、俺はゲイシャを開けた。  真空パックされた袋を開けただけで、その香りが鼻を突く。  なんていい香りなのだろう。俺はその余韻に浸りながら、スプーンで2杯、豆を掬った。  ミルに豆を入れる。電動の物もあるが、俺は手動の物を使っている。  電動の方が一様に豆が挽けるのだが、あえて手動の物にしている。特別な理由はない。その方が美味しいように思っているだけ。  ゆっくりとミルのハンドルを回す。1回1回丁寧に。  やがて豆が粉末状になり、ミルの音が変わる。粉をフィルターに移し、ゆっくりとお湯を注ぐ。  時間を掛けてゆっくりとコーヒーが滴る。部屋中がゲイシャの香りでいっぱいになる。  コーヒーサーバーに半分ほど溜まったところで、ドリップを取り、買って来た保温用の水筒に入れる。  蓋を締め、それと一緒に紙袋を抱えて、俺は部屋を出る。  そして、隣のインターホンを鳴らした。
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