おじさんはビールとともに

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 商品の受注や発注、新商品の勉強会など、毎日時間に追われながら過ごし、帰宅は早くても7時を過ぎる。場合によっては日を跨ぐこともある。  全ては顧客の笑顔のため。完成した住宅を見ると、そこで生活する家族のことを想う。年齢層は様々だが、30代の家庭が多い。  そしていつも思う。いい家になったと。その自己満足があったから、続けられてきたのだと思う。  その日も帰宅は9時を過ぎていた。辺りは暗く、冷え切った風が頬を掠める。コートの襟を立てて、自分の家に帰る。  住宅メーカーに勤めていながら、俺は自分の家を持っていない。理由は単純。独身だから。  もうすぐ御年42を迎える。いわゆる本厄だ。だからと言って、何かをどうする訳でもないが。  
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