もう少しだけ

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『飛び出したのはやはりシラヒメ! これまでのレースと同様(どうよう)、逃げて他馬(たば)を寄せ付けさせません!』 今まで走ってきた時と同じ、私は他の馬達よりも前に出て、ずっと先頭で走り続けた。 何回、何十回と走ってきた。 他の子のお尻なんて一度も見ないで、ただただ前を向いて、お客さんが大歓声を上げてくれる場所を目指すの。 その先にある、みんなの笑顔にたどり着く為にーー。 1番になれば、まずは私の上に乗ってる騎手(ジョッキー)さんが喜びの叫び声を上げながら首を叩いてくれる。 少し痛い時もあるけど、 「良く頑張ったな!ありがとうっ!」 って、嬉しそうにしてくれるの。 次は観に来てくれたお客さんが大歓声を上げながら、 「シラヒメ〜!おめでとう!!」 って、拍手をしながら、私の名前を呼んでくれたり、お祝いの言葉を言いながら喜んでくれる。 そんな大歓声の中を歩いて行くと、厩務員(きゅうむいん)さんがニコニコで迎えてーー……。 いや、たまに涙と鼻水で汚いんだけど、 「お疲れ様!よく無事に頑張って来てくれたな!」 って、何度も何度も私の顔を撫でてくれるんだ。 それが私は、堪らなく好き。 私が1番で帰ると、みんながニコニコで出迎えてくれる。 私はそれが……。 ーーううん。 私はみんなが大好きだから、みんなの笑顔も大好きっ!! だから絶対に、今日も1番で駆け抜けるーー!!
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