1.ピンク・桃園明美(主婦)の場合

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『メンバーに選ばれました。カラーはピンクです』  小包に同封されていた手紙には、たった一言だけ記されていた。 「メンバー?」  専業主婦である桃園(ももぞの)明美(あけみ)(48)は、心当たりのない贈り物を前に呆然と立ち尽くす。 「メンバーって何の? あ、地元のママさんコーラス・サークルのことかしら。やだぁ、『私、音痴だから』って、お断りしたのにぃ……」 ━━きっと、芸人の阿佐ヶ谷姉妹のような衣装を送りつけてきたんだわ。ピンクのドレスを身に着ければ、気持ちも変わるに違いないって……。 「そうは問屋が卸さないわよ~」  不敵な笑みを浮かべながら、明美は心の声を口にする。と同時に家事でささくれた爪をダンボールの封に突き立て、一気に押し開いた。 「ほらぁ。やっぱり、ピンクのドレ……ピンクの……ピン……」  現れたのは、ピンクのドレスではなく。 「え、何これ」  ピンクの戦隊スーツだった。
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