愛しさの先

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『嬉しいな、恋人同士に見えるかい?』 ほら、やっぱりな。人を好きにならないこの人は鈍感なんだ。 だから…俺も乗ってみる。 「蘭ちゃん、俺たちお似合いだろ?」 『はい…怖いくらいに…本物に見えます』 『大我…良かったな?』 「星矢…そうだな」 見つめ合う俺たちを見て、蘭ちゃんは恥ずかしいのか、受付に戻って行った。 『大我、明日休みだろ?帰り待ってるよ』 「わかった、後でな」 数時間後、俺は仕事を終えて帰り支度をしていた。 あの人の綺麗な後ろ姿を見つけ声をかけようとしたがその後ろには女の子…蘭ちゃんだ。 何かおかしな雰囲気だったから、俺は物陰に隠れて様子を伺う。 『私…浪川さんの事ずっと好きだったんです』 『だね…見てればわかる』 『でも、浪川さんは私を全然見てもくれない…あなたのせいじゃないんですか?』 『俺のせいってどう言う事かな?』 『休みの日も一緒なんでしょ?彼を変な方に引っ張らないで下さい!あなたは確かにお綺麗ですけど男です!』 はぁ…まずいな…このままじゃあの人が悪者になる。 『そうだね…俺も彼も男だよ?でも人を好きな事に関係あるかい?』 『だって、普通じゃない!』 『そうか…じゃあ君は普通な浪川大我が好きなんだな』 『当たり前じゃないですか!』 『じゃあ、君の負けだよ。俺は大我が男だろうが女だろうが好きなんだ。人間として、彼を大事に想っている』 俺はハッとしたのと同時に体が動いていた。 「蘭ちゃん、そこまでだ。ごめんな、俺がちゃんとしなかったせいで」 『浪川さん…聞いてたんですか?』 「ごめん…でも俺もこの人を真剣に想ってる。蘭ちゃんの気持ちには応えられない」 『うそ…私を振るならもっとマシな嘘吐いてくださいよ』
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