恋をした

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『大我がそんなになるなんて、よっぽどなのね』 「誰か抱いて忘れようと思ったけど、似てる奴も見つからねぇ」 俺はもう一度、店をぐるっと見回す。 『似てる人探すなんて、恋してるんじゃない…大我からそんな事聞けるなんて妬けるわ』 【大我!久しぶり!出ようよ〜】 常連に声をかけられる、いつもの事。 そうだな、誰でもいいかって思って席を立とうとした時だった。 『ごめんなさいね、大我は今夜は売約済みなの』 【ちぇ】 「マスター…」 『今夜はやめときなさい、その人の事想ってるんでしょ?決着着くまで大人しくね?』 「そうだな…」 また、綺麗なあの人を想う。 『蕩けた顔しちゃって…大我、あなた恋してますって顔してる。でもノンケなんて辛いわ』 「ふふ…そうだな」 その頃には、ゲイとかノンケとかどうでも良くなっていた。あの人がいい…ただそれだけだった。 『おはようございます。あれ、浪川さんなんかいい事ありました?』 「蘭ちゃんおはよう。なんで?」 『うーん…なんかイキイキしてるってゆーかぁ』 「そうかな?別になんでもないけどな」 『彼女できたとか?あ、そう言えば昨日体験に来た堤さん!めっちゃイケメンでしたね?』 ドクンドクン 「そうだったかな?」 あれはイケメンじゃなく、美人って言うんだよ。 『みんなで噂にになってました。あの大手設計事務所に勤めてるし』 そんな事言ってたな。デスクワークだって、だからあんなに身体が硬いんだって。 何度か撫でた細腰と汗と香水の混じった匂いを思い返す。 好きだ。 会いたい。 ノンケだろうと、好きでいるのは勝手だろう? 『女性より綺麗でしたもんね、でも私は浪川さん一筋ですけどぉ』 俺は聞こえなかったフリをして事務室へと入って行く。 【堤星矢】で検索をかける。フリーコースと言うことは時間があればいつでも来る気か。
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