何度でも君と

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そうしてヤスキヨ漫才をしばし堪能しているとラインにマサからの連絡が丁度きた。 そこには「優勝は裸イッカンさん! そしてなんと、後日敗者復活戦として僕達が残りました! カズ君頑張ろうね!」と意気揚々とした報告が来た。 「敗者復活戦とかそんなおこぼれいらんねん。俺が欲しいのは上方漫才賞や」 そんな言葉を言いながら「わかった」とだけ返事を返した。 本当なら一人で漫才をやりたいがそれでは漫談師になる。漫才ではない。 ボケとツッコミ。 それはどうしても一人では出来ない。 だから俺は相方探しに大いに苦労した。 俺の理想とする相方を探し続けたがどいつもこいつも「バイトが忙しい」「理想が高い」「彼女が出来た」とか下らない理由で何人も去っていった。 そんなときに出会ったのがマサだった。 マサは実は高校生の時の同級生だった。 関東からきて関西に馴染めずにいたのをよく覚えている。 だから俺はよく暇をもてあましたマサに完コピの「ヤスキヨ」漫才を披露していた。 そして高校卒業と共にマサはまた東京に引っ越した。 それから特に連絡は取っていなかったが俺が大学を卒業して芸人を目指し芸人学校に入った。 それから相方を探しまくっていたときにマサはひょっこり現れた。 そして俺の相方に芸人になりたいと言い出して二人で「ベスト」を組んだのが二年前だった。 ボケはマサ。ツッコミが俺。 マサの関東訛りがそこそこ抜けるまで一年。 ようやく上方のお笑いぽっいモノになるのに一年。 まさに亀の歩み。 こんなことでは上方漫才賞どころかお笑い新人グランプリも夢のまた夢。 目には見えないのに重さばかりを感じる焦燥感を打ち消そうとして、その日俺は朝までネタ作りに励んだ。
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