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私は、ウィアから魔剣を預かった。
どうやってなだめているのか、風などという生易しい性質ではない。
振るいようによっては辺りが大嵐になる。
これまで何の事件も起こさなかったのだろうか。
魔剣士ウィアが持つ力は並大抵ではない。
表向きは確かに魔銀。
しかし魔銀ではもうこの力を抑えられないはずだ。
私は鑑定を進めてゆく。
案の定、やたら堅固な鍵を解くと、施された幻術が露になった。
見破りさえすれば本来の姿が見えてくるが、解錠すべきか悩む。
私はすぐに思い直した。
号をつけることを誰かに託したということは、あの男はその時になれば本名を明らかにされても構わないと判断したのだろう。
「ウィア君。君の力はこれを操るに充分だ。私が号をつけることを許してくれるかい?」
ウィアは頷いた。
私は最後の錠を叩き壊すように解放した。
「完全解錠。材質は神銀。擾乱の湾刀。鑑定師リームスは号を『未来』とする」
私は号の情報を編み上げ、未来に組み込んでウィアに手渡した。
「……これが……完成品なんだ……これまでとはとても比べものにならないくらいしっくりとくるし、力を抑え込むのも簡単だ……」
目を輝かせているウィアに私は告げた。
「銘はアートルム。そうだなあ、死んだとされている男の作では縁起はよくないかもしれないが間違いはないよ」
やはり生きていたのだ、と心の底から安堵した。
けれども会ったら一発殴らせてもらわなくてはならない。
どれほどの人間を悲しませたと思っているのだ。
ウィアはしばらく口をぱくぱくさせながら私にメダルを返し、ようやく言葉を絞り出した。
「そんな……アートルム作で、二つ名を持つ鑑定師の号を刻んだ神銀剣なんて……」
「盗もうとする輩はいるだろうね。でも安心していい。こんなもの触ったら普通の人間は吹っ飛ぶか、力酔いで昏倒する」
力に慣れている私の手でさえ、未だびりびりと痺れているくらいなのだ。
心配する必要はなさそうだ。
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