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美しいタイルを敷き詰めた街の広場の片隅に、私は腰を下ろし土人形を並べた。
終戦から十五年以上が過ぎ、街には戦の爪痕はもう残ってはいない。
木々は心地のよい陰を作り、清らかな水が常に湧き出し枯れることのない泉がある。
人々は色とりどりの服を纏い、思い思いの言葉を交わし笑い合う。
老若男女が集い、楽器を持ち奏で始めたたくさんの人形を珍しげに覗き込んでいる。
私は語り出す。
ある魔剣士の歩み始めたさまを。
過去の英雄との邂逅を。
未来の号を冠した剣を携え走り出したあの日を。
故国は大戦に踏みにじられ、大きな傷痕を残した。
その傷痕が癒えぬうちに内乱でさらに疲弊していった。
度重なる戦を終結させ、国王の座に就いたオルビスを支え助ける女傑。
切り拓いたのは自らの未来。
そして民の未来。
嬉々として背負い、軽々とかけ出す姿を誰もが讃える。
ティルエ魔法国王妃にして魔剣士ウィアの名を、今や知らぬ者はない。
【完】
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