獄の恋

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獄の恋

云わねども追わねども 遠くなる貴方の背に縋りついて 甘えれるなら可愛かろうて いっそ泣けたら良かろうて 貴方の初めてであり終わりでありたい 目に掛かる薄紙を弾いた音は何の声か 打ちやる恋慕に託けて 云わぬ花を添える狡さよ 夕暮れに鳴く あの子は何処の子 触れ回る軽快さは重くて深い 張った気持ちの行き場は いっそ深い諦めさえ見せて 花一匁で嗤う御前様には 姥ケ火が、よう似合う かごめで泣いて落ちゆく御前様にゃ 張り付く蛇の目が、よう似合う 粋に息して死ぬるなら 三千世界の鴉共とて赦してくれろ 繋いだ数珠とて嬉しかろ 繋がる数珠とて嬉しかろ 傷を付けずに愛せたなら それは、きっと嬉しかろ 傷もなく愛せたなら それは、きっと無垢であろ 想い想うて合い添わぬ 紅も縒れば蜘蛛の糸 尾張は遠かろ あの世は近かろ 神の遊戯に負け墜ちて だども救うのも神であらしょ 取り残された二人は、きっと悲しい 惜しんで咲いた江戸の花 二人に手向けた獄の花 お前様の涙を私にくれろ 問わねども訪う問いに否は無く 乱した黒は黒縄に 乱れた黒は業の先 赤々と咲く業火の花が添える恋 焼け爛れた私の心は地獄に在る 神仏赦さぬ恋ならば、いっそ地獄で構うまい 愛しい貴方の瞳だけは私の物 振り合った、この袖だけは貴方の物 雌鶏鳴いたら迎えに参ろ 雌鶏泣いたら珠をやろ 舐る焔に貴方を視る 舐る焔は私の心 逢いたい一心が叶う時 獄の恋は花開く
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