罪悪感

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 本当はめちゃくちゃゲンナリしていたし、朝っぱらから目立つ車を家の前に横付けにされたせいで無駄に近隣住民の皆さんの視線を集めてしまい、怒鳴り付けたい衝動に駆られた。  しかしそんな真似をしたら、昨日の努力がすべて無駄になってしまう。     そう考え、頭の中では彼の事を思い切り罵倒しながらも、無理矢理笑顔を作りありがとうございますとだけ答えた。  勤務先であるにこにこ弁当に到着するまでの間、終始西園寺さんはご機嫌だった。  だから昨日からの僕の行動になんて恐らく何の意味もなかったのだと気付き、ひとり更衣室で嘆息した。 *** 「なぁ、ハラちゃん。  ‥‥‥あの作戦、ぜんっぜん効果がなさそうなんだけど」  お昼前になり、出勤してきた遅番のハラちゃんに恨みがましい視線を向け、言った。  するとハラちゃんは一瞬キョトンとしたように首を傾げ、それからプッと吹き出した。 「陸斗、あれマジでやったんだ?  あんなのはあくまでも憶測の域を出ない話だし、そりゃあ有効とは限んないだろ。  っていうか下手したら、ますますストーキングが酷くなったりして!」  西園寺さんが悪人ではないのをハラちゃんも知っているから、冗談交じりに脅された。  でも、確かに。  ‥‥‥その可能性、全く考えてなかったな。  それにもしも『冷たくされ慣れていないから』僕に執着しているんじゃないのだとしたら、純粋に気持ちを向けてくれている彼を、弄んでいる事にはならないか?  これまであれだけ塩対応を続けて来たのだから、昨日も特別優しくしてはいないものの、他の人と接する時と同じように普通に話すだけで、その気もないのに変に期待させてしまっていたとしたら‥‥‥。  昨日の西園寺さんの嬉しそうな笑顔を思い出し、罪悪感から眉間に深いシワが寄るのを感じた。
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