断じて嫉妬などでは、ない

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断じて嫉妬などでは、ない

 朝のお迎えだけでなく、その日も西園寺さんは忙しい時間の合間を縫い、正午過ぎに店に現れた。   「陸斗くん、こんにちは。  やっぱりいつ見ても、君は可愛‥‥‥」 「今日もどうせ、唐揚げスペシャルですよね。  少々、お待ちくださーい」  彼がすべてを、言い切る前に。  イラッとして、ついいつもの調子で冷たく言い放ってしまった。    すると僕の隣でハラちゃんが、思わずといった感じでブフォッと吹き出した。  それをギロリと睨み付けながら、返事を待たずに袋に詰めようとしたのだけれど。  ‥‥‥そこで西園寺さんは二本の指をピッと、Vサインするみたいに立てた。 「うん。でも今日は、それをふたつ」  前に秘書の二見さんは買わなくて良いのかと聞いたことがあるのだが、彼はヴィーガンらしく、丁重にお断りされた。  だから西園寺さんがうちで弁当を購入する際はいつも、ひとつだけと決まっていた。 「‥‥‥珍しいですね」  変に期待をさせるのもよくないかと思い悩んだ末、結局いつも通りに振る舞おうと決めたのだけど、つい余計な世間話を結果として振ってしまった。  すると彼はにっこりと嬉しそうに笑い、スマートフォンをポチポチとタップして、僕に画面を向けた。 「可愛いでしょ?  取引先の企業の社長のご子息の、(すばる)くん。  今日は学校が休みらしくて、社会見学も兼ねてうちの会社に遊びに来るらしいから、その子の分」  彼の口振りから、小学生くらいの子供を勝手に想像してしまった。  だけどその写真に写し出されていたのはこれまで僕が見た事もないほど美しい顔をした、長髪の青年だった。
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