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通り過ぎる女の子達は皆振り返り、頬を染めるほどの美丈夫。
天は二物どころか、三物も四物も与えるところには与えるもんなんだなと、同じくバイト仲間のハラちゃんは初めてこの男を見た時感嘆した様子で言っていた。
しかしこのレベルまでいくと、羨ましいとも妬ましいとも思わなくなるのか、まるで別世界の生物を見ているような感覚になる。
なのに、この男。
‥‥‥何故か僕の事を、絶賛ストーキング中だったりする。
「そりゃあこれだけ通われたら、嫌でも覚えてしまいますよ。
毎日毎日、良くもまぁ飽きもせず来ますよね、ホント」
呆れ口調で、嫌味を口にした。
だけど西園寺さんは、恍惚とした笑みを浮かべ答えた。
「飽きないよ。だって陸斗くんが愛情を込めて作ってくれるお弁当は、本当に美味しいからね」
「料理自体はセントラルキッチン方式だし、手順通りに作っているので味は全国共通ですけどね。
ちなみに愛情は、込めてません」
にっこりと微笑み、答えた。
だけど彼はまた嬉しそうに笑って、弁当をカウンターに置こうとした僕の手に、どさくさに紛れて触れてきた。
「そういうツンデレな態度も、堪らないよ。
あぁ‥‥‥出来る事ならばこのまま、家に連れて帰りたい!」
うん。‥‥‥今日も今日とて、キモい。
「いつ僕が、あなたに対してデレて見せました?
寝言は、寝てから仰って下さいね」
満面の笑みで、答える僕。
しかしそこで西園寺さんは、秘書の二見さんに肩を掴まれた。
「海晴さん、時間です。
遊んでないで、そろそろ行かないと」
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