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いつにない素直な言葉に西園寺さんはちょっと驚いた感じだったけれど、すぐに拳をぎゅっと握り締め、力強く自信に満ちた表情で答えてくれた。
「ありがとう、こちらこそ。
俺達が初めて二人きりで過ごす、クリスマス。
君の一生の思い出に残る、素晴らしいモノにしてみせる!」
‥‥‥あ、これ駄目なパターンのヤツだ。
フラッシュモブはやめて欲しいとお願いしたけれどこの人、間違いなくろくでもない代替案を考えている。
一生記憶には残ったとしても、きっとそれは僕にとって、良い思い出にはならないだろう。
そう考えたから、満面の笑みを浮かべて拒絶してやった。
「僕は本当に平凡な、普通のクリスマスが好きです。
ホテルの予約はもう仕方がないにしても、絶対にこれ以上余計な事は企てないで下さい。
フリでは、ありませんからね?」
すると西園寺さんはちょっと拗ねてしまったのか、唇をツンと尖らせた。
‥‥‥子供かよ。
だけど彼のそんな表情、僕は嫌いじゃない。
それどころかむしろ最近は、可愛いなって思う。
もちろんそんなのは、ほんの少しだけだけれど。
「おやすみなさい、西園寺さん。
またね」
笑顔を向け、そう言うと、彼は一瞬のうちに機嫌が直ったのか、嬉しそうに笑って言ってくれた。
「おやすみ、陸斗くん。
またね」
そしてナチュラルに頬に手を添えられ、キスをされそうになったから、それはサッと避けておいた。
「‥‥‥さっきは、君からした癖に」
再び不満顔で、じとりと僕の事を見つめる西園寺さん。
‥‥‥さすがに、誤魔化し切れなかったか。
でもこの話をこれ以上続ける気は更々無かったから、にっこり微笑んでしれっと答えてやった。
「さぁ?何の事でしょう。
またおかしな妄想をして、夢と現実の区別が付かなくなってしまっているのでは?
いつも言っていますが、寝言は寝てから仰って下さいね」
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