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ある日のことだった。
とある男の子が好奇心に負けていたずらをしようとしていた。
かまどの火に興味が湧いたのだ。
ゆらゆらと揺れる赤い光が夕焼けを写す水面のように不思議だった。
男の子は母親の目を盗んで、その火に手を入れようとした。
その時だった。
「やめなさい! 危ないじゃろう!」
男の子は母親の鋭い声に体をびくっと震わせた。
体が石のように硬くなった。
すかさず母親が男の子を抱きしめた。
男の子の体が柔らかな腕に包まれる。
男の子は安心したのか、大声で泣き出した。
その時、不思議なことに、母親も泣いていた。
男の子の耳は母親の小さな呟きを耳にした。しかし、意味はわからなかった。
母親はこう言った。
「ああ、そういうことだったのですね」
男の子は母親がそう言った後、自分の体をきつく抱きしめていることに気がついた。
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