12人が本棚に入れています
本棚に追加
すごくすごく大変なのに、いじわるな鳥たちは、それを簡単にこわしてしまう。
奥さんに、早く安心してたまごを産める場所を用意してあげなくちゃいけないのに。ぼくはなんて弱いんだろう。
あれこれ考えていたら、心といっしょに、小さくてかるいはずの体がずんと重くなった気がした。
ある日、いつものように巣の材料を集めて飛び回っていると、ふいにカシャッという音がした。
音のしたほうをちらりと見れば、遠くに、あたたかそうな毛糸のぼうしをかぶった、おねえさんが立っている。
首に、大きな黒い箱をぶらさげて。
――あ、あの人。
会うのは初めてじゃない。季節に関係なく、ときどきこうしてやってきて、ぼくらに音のする箱を向ける人だ。
物知りなフクロウに聞いたら、「カメラ」って名前のあの黒い箱で、「シャシン」っていうものをとって、ぼくらみたいな動物や花の様子を残しているらしい。そういう仕事をしてるのかもしれない、って。
冬の間だけぼくらを探してさわぎ立てる人間たちとは、ちょっと違う気がする。
だから、会えたときには、ぼくなりにサービスしてあげるんだ。
最初のコメントを投稿しよう!