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ぼくはシャシンをとりやすいように、巣の材料にする羽毛をくわえたまま、おねえさんにできるだけ近い木の枝にとまって、ポーズを決める。
すると、おねえさんもぼくに気づいて、うれしそうにほほえみ、またカメラを向けてくれた。
カシャッ、カシャッ、と何度か音がする。
ぼくらはヤチョウって言って、人間に飼われちゃいけない鳥らしいんだけど、この人になら飼われてもいいかな、なんて思う。
毛糸のぼうしからのぞく、短めの黒い髪。体を包む、ミルクティー色のコート。
北海道の春は、まだまだ寒い。カゼ、ひかないようにね?
ぼくは、おねえさんがカメラをおろしたのを見届けてから、ふたたび巣に向かって飛び立った。
それからしばらくたって、巣の完成も間近という、よく晴れた日の朝、またあのおねえさんを見かけた。
ぼくは近くの木におり立つ。
今日はこの前より、距離が近い。たぶん、今まででいちばん近い。
とまった木の枝から、横を向いたおねえさんの肩が、すぐ目の前に見える。
だけどおねえさんは、きれいに咲いたお花のシャシンをとるのに夢中で、ぼくに気づいてくれない。
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