12人が本棚に入れています
本棚に追加
ねぇねぇと声をかけるつもりで、ジュリリ、とひと鳴きすると、ようやくこっちをふり返って「あっ」と言った。
うれしくなって、今日もとってよ、とポーズを決める。
まだ材料を探しにきたばかりだから、何もくわえてないけどごめんね。
そんなぼくに、おねえさんはふっとやさしく目を細めると、
「あなた、いつもそうやってサービスしてくれるよね」
そう言って、リクエストにこたえるようにカメラをかまえた。そして、
カシャッ、カシャッ、カシャッ……
角度を変えながら、いつもよりたくさんシャシンをとってカメラをおろし、
「ありがとう」
とつぶやいたかと思えば、
「これ、お礼」
足もとに落ちていた小枝を拾って、ぼくにさし出す。
「今、ちょうど巣作りの時期でしょ? 役に立つか分からないけど、よかったら」
胸があったかくなった。どうしてそんなになんでも知っているんだろう。
いつも材料をくわえていたからかもしれないけど、巣作りにいそがしいことにも、ぼくのサービスにも、おねえさんじゃなきゃ、気づかなかった気がする。
雪の妖精なんかじゃない。おねえさんは、ちゃんとぼくらを、ぼくをみてくれているんだ。
最初のコメントを投稿しよう!