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8歳
「ねぇ、セティ」
「はい、お嬢様」
「……昨日のこと、父様には黙っててほしいの」
「昨日のこととは?」
「……だから、あのことよ。分かるでしょ⁉︎」
「さあ、あのこととは、どのことでしょうか。昨日お嬢様が帰り道に犬に吠えられて大泣きしたことでしょうか、それとも、苦手なグリンピースをこっそり旦那様のお皿に移したことでしょうか」
「ち、違うわよ! というか、それも黙ってて!」
「では、鶏の無精卵を自分のベッドで温めて、潰れた生卵でシーツを汚した挙句ひよこが死んだと大騒ぎしたことですか?」
「それは一昨日! 騒いだときに顔引っ掻いたのまだ怒ってるの⁉︎」
「いえいえ、そんなことはありません。ただ、それら以外に思いつく“あのこと”がございませんので」
「……だから、あれよ、その……昨日の夜、怖い本読んじゃったから、セティに……」
「私に?」
「寝る前のトイレ付いてきてもらったこと……」
「ああ、あれですか。ありましたねぇ、そんなこと」
「とにかく、父様にはそのこと黙っててよね! 絶対馬鹿にされるんだから!」
「かしこまりました。もっとも、この部屋での会話はすぐ隣の部屋にいらっしゃる旦那様には丸聞こえなのですが」
「え゛」
「お嬢様、秘密のお話をされるなら入ってくるときに扉は閉めた方がいいですよ」
「もっと早く言いなさいよ‼︎」
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