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5歳
「ねぇ、セティ」
「……それは私の呼び名でしょうか?」
「ええそうよ。あなたのなまえ、長くておぼえられないわ。セレ、セレ……ティ?」
「セレスティノ・ルーベンバイトです」
「そうそう、セレッティノ」
「セレスティノです」
「セレスチノ?」
「セレスティノです」
「…………」
「…………」
「……とにかく、あなたはセティよ! いまからあなたはセティなの!」
「……かしこまりました。お嬢様」
「アンリエッタ」
「はい?」
「わたし、アンリエッタっていうのよ。知ってた?」
「……存じ上げております」
「じゃあ何でアンリエッタってよばないの?」
「私はお嬢様の執事ですので。私のような者がお嬢様の高貴なお名前を口にするのは憚られます」
「はば……なに?あなたむずかしいことば使うのね」
「つまり、私がお嬢様のお名前を呼ぶのは恐れ多いということです。お嬢様のお名前は、いつか貴女がお慕い申し上げた殿方がお呼びになるものかと」
「ふーん。よくわからないけど、まあいいわ、それよりおやつよ! おやつおやつ!」
(色気より食い気……)
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