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デコレーションにピストル 2
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俺の通う学園の校舎は四つに及ぶ。
それぞれを渡り廊下で繋げた造りで、行き来には苦労しない。
第一棟は一年生、第二棟は二年生、当然の流れだが第三棟は三年生で、第四棟については特別教室が入った別棟と呼ばれていた。
新学年スタートの翌日だ。
全校生徒が呼び出され、朝から小学生の朝礼のように体育館に整列していた。
妙に女子が騒いでる。
「なぁ、青葉!何があんの?」
後ろに並ぶ青葉に問いかけると、当たり前のように「知るかよ」と返事が返ってくる。
「ずっと一緒に居る俺に聞いても分かる訳ねぇだろ…誰か違う奴に」
ゴンゴン!キィーン!
先生がマイクを叩いた後、ハウリングを起こし耳をつん裂く音が体育館に響き渡る。
ギュッと縮こまった肩をソロリと戻しながら舞台の上を見上げた。
「あっ…」
「あ〜…」
俺と青葉はマヌケな声を出しながら教頭に続いて歩く派手な男に目が釘付けになっていた。
馬鹿みたいな俺たちの声に混じって女子が黄色い歓声を上げたのは言うまでもない。
壇上の教頭が盛大に咳払いをして、体育館が静まり返る。
「えぇ〜本来なら昨日の始業式に間に合う予定でした、新任の先生をご紹介しますっ。じゃ、白川君、挨拶を」
「はい。え〜、只今ご紹介にあずかりました新任の白川冬空(シラカワトア)です。見て分かる通り、半分アメリカ人の血が流れています。特技はバスケットボール。音楽鑑賞が趣味です。皆さんと仲良くなりたいので、どうぞ気軽に声をかけてくださいね。」
体育館がワァーッと盛大な拍手と歓声に包まれた。
さながらライブ会場のようだ。
分からなくもないが、同じ同性としてはあそこまで完璧だと面白くないもんだ。
「男として全てを兼ね備えて見える…」
「あはっ!秋空はああいうのがタイプかよ?」
後ろの青葉が俺の肩に腕を掛けてもたれてくる。
「タイプってなんだよ。俺は今、絶望してんの!あんなの居たら、新入生の可愛い子全員持ってかれんだろが」
首だけで振り向き肩に顎を乗せる青葉にデコピンしてやる。
「いってぇっ!ちぇ…すぐ手ぇ出すんだから。モテねぇぞっ」
「うっせぇ!俺は絶対今年こそはモテるのっ!!」
グッとガッツポーズをする俺に、青葉は肩を竦めて溜息を吐いた。
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