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デコレーションにピストル 3
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朝の全校朝礼が終わり、体育館から生徒がゾロゾロと教室へ戻る。
どこもかしこも、さっきの白川とか言う先生の名前で持ちきりだった。
タッパも180は超えてそうだったし、日本人離れした顔面と、長い手足。キラキラ光る金髪に、何となく黒いような、青いような灰色の瞳が印象的だった。
騒がないはずないよなぁ。
先生というより、モデルとかの方がピンとくる感じだもん。
そんな事を考えながら、青葉と二年二組の教室に入るなり絶句した。
教壇には、出席簿を持った白川先生が立っていたからだ。
青葉がグイッと俺の腕を引く。
傾いた身体がバランスを崩してよろめきながら青葉を見た。
「なんで?」
青葉の言葉に「さぁ…わかんね」と返し、自分の席に座った。
近くで見たら、よりイケメン具合に拍車がかかる。
「みんな、さっきは時間を貰ってありがとうなっ!今日は田中先生がお休みです!変わりに俺が出席をとります。呼ばれたら返事してくれ。」
教室のあちこちからヒソヒソと女子達の内緒話が聞こえる。
「ヤバいよぉ〜!超イケメンっ!」
「ムリムリっ!名前呼ばれたら好きになるぅ〜!」
俺は窓際の席で頬杖を突きながら白川先生を見ていた。
机と机の間をセンスの塊みたいな洒落たスーツが横切っていく。
何かあるはずだよな…欠点…いや…無い…無いかもしんない。
名前を呼ばれた事に気づかず白川先生を目で追っていた。
すると、出席簿でポンと頭を叩かれて、整い過ぎた端正な顔面が前傾姿勢で俺に突き付けられた。
「斉藤秋空?お前の名前じゃねぇの?」
ニッコリ笑って首を傾げるから、その迫力がありすぎる顔面に赤面してしまった。
「お、俺です…すみません」
「ふりがな間違ってるのかと思ったよ。秋の空でアキラかぁ…綺麗な名前だな…はい、次〜椎名悠二〜」
「はいっ!」
何事も無かったみたいに出席をとり続ける白川先生。
俺は近づいて来た間、息を止めてしまったらしく、ゆっくりゴクッと喉が鳴るのを感じた。
"綺麗な名前だな"
そんな事…初めて言われて
ビビったせいだ。
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