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デコレーションにピストル 8
8
結局、放課後はバスケ部の練習試合に借り出される事になった。
病欠の二年の穴埋めだ。
ピピーっとホイッスルが鳴って、体育館の真ん中に集合する。
青葉とのジャンケンに負けた俺は先に試合に出る事になった。
身長175の俺は、バスケ部の中に入ると大して高くない。
むしろ低いくらいだけど…。
それでも役立つのはこの跳躍力!!
パス回しで宙に浮いたボールに手をかけて一気にシュートに持ち込む。
ザンとネットが揺れて、俺は両足で着地して、メンバーとハイタッチする。コートを走って戻る最中、視界の端に金色に輝く柔らかに揺れる髪が目に入った。
白川先生だ。
放課後の体育館にどうして?
「おいっ!秋空っ!」
「おっ!おぅっ!」
俺はメンバーの呼びかけにハッと我に返りボールを受け取る。
かなり距離を感じたけど、フォームは完璧。
キャッチアンドシューットッ!!!
ザンッ!
「っしゃあっ!!」
小さなガッツポーズを決めた直後、ホイッスルが鳴る。
俺はどうしてだか青葉じゃなく、白川先生を探していた。
入り口付近に立ち、腕組みしている白川先生を見つけて、俺は駆け寄り声をかけていた。
「白川先生どうしたんすか?」
「秋空っ!今日、練習試合するって昼間、ホラ、バスケ部とバスケしてる時に聞いたからさ。久しぶりに試合見たくて」
「そうだったんだ!どう?俺のシュートも悪くないだろ?」
ピースサインを突き出した時、後ろから青葉の怒鳴るような声がした。
「秋空っ!」
「青葉、白川先生、見学に来たんだってさ。俺、大活躍だったじゃん?良いとこ見せれたし、次は青葉だなっ!」
ニコッと微笑みかけると、青葉はぎこちなく視線を逸らし
「別に…先生は関係ないだろ」
と冷たく言い捨ててコートに入って行った。
俺は首に掛けたタオルの両端を掴んで真横に引きながら呟いた。
「青葉の奴…何怒ってんだよ…」
クスクスと笑い声がする。振り返ると、白川先生が拳で口元を隠すように笑っていた。
「何?先生、なんで笑ってんの?」
「いや…寺崎…可愛いよな。」
「はぁ?可愛い?アイツが?」
俺は眉間に皺を寄せながら続ける。
「俺よりガタイも良いアイツの何が可愛いんすか?めちゃくちゃ機嫌悪そうだったし。」
コートに出た青葉に目をやる。
早速派手にダンクなんか決めて、見学に来てる女子がキャーキャー騒いでる。
「可愛いよ。大切なおもちゃを取り上げられてしまう子供みたいな顔をしてるんだもん。」
「大切な…おもちゃ?」
俺はコートを走り回る青葉をジッと見つめた。
時折、俺の方を見て、フイと逸らす視線。
白川先生が何を言ってるのかは分からなかったけど、その日の青葉のプレイは酷く…
荒れていた。
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