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「それ、月曜の資料?」
「はい、お休みの前に目を通したくて」
「なにか気になるところでも?」
「そういう訳ではないのですが……なんだか不安で」
答えると、二階堂部長は白い歯を見せて笑った。
「谷川さんなら大丈夫、僕が保証する」
ああ、癒される。
陽介がいなかったら、間違いなく恋に堕ちていただろう。
極上の笑顔を堪能しながら、私も笑みを返す。
「ありがとうございます、そうですね……そろそろ帰ります」
「うん、心配しなくていい。当日はなにがあってもフォーローするから、土日はしっかり休むんだよ」
頼もしい言葉にようやく安心し、パソコンの電源を落とそうとしたときだった。
「え……谷川さん、もしかして今日、誕生日だった?」
部長が、2つある卓上カレンダーのうち、私用の方を指差した。
6月6日金曜日、本日の欄には『my birthday・6時半、プランタン前』と小さく書き込まれている。
「ああ、消し忘れてました」
「もう8時過ぎてるけど」
本当は、陽介とデートの約束をしていた。
でも『クールンルン』のプロジェクトが大詰めを迎えているので、落ち着いてから祝って貰うことにしたのだ。
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