なんだかとても疲れましたので

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が、急に後ろから伸びてきた手にお腹を抱えられる。 勢いよく歩いていたので「ぐえっ!」と、カエルのような声が漏れた。 かと思うとヒョイと肩に担がれる。 「ヒッ、いやああああ!」 百八十センチ近い類さんの肩に乗せられたのだ。 高いし不安定だし大股で歩きだすし、怖くて悲鳴を上げた。 暴れて抵抗するけど、たいした妨害にもならないようで、あっと言う間に類さんの部屋に連れ込まれる。 「おっ、降ろしてえ!」 「降ろしたら逃げるだろう」 「逃げないからっ!」 「……分かった」 望み通りに降ろしてくれたはいいけど、そこは彼のベッドの上で。 「ま……まさか、体で言うことを聞かせようって魂胆?」 ゲスの考えそうなことだ。 瞬時に態勢を立て直し逃げ出そうとしたけど、その瞬間またもや体が宙に浮き上がった。 もちろん今度も、お腹を肩に乗せられた、荷物担ぎスタイルだ。 「逃げたな」 「貞操の危機なんだから逃げるわよ!」 「なんもしねえよ」 「信じるもんですか! とにかく降ろして」 「ダメだな」 「じゃあ、持ち方変えて」 「それも無理だ」 「どうして!?」 「見せたいものがある」 言いながらデスクの方に歩いて行って、椅子の上に置いてあった鞄に片手を入れる。 そこから分厚いファイルと財布を器用に取り出した彼は、私の目をまっすぐに見つめる。 といっても、私の上半身は彼の肩からぶら下がっているので、なんとも不自然な角度なんだけど。
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