イケてる上司の裏の顔

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「だいたい部長ともあろうものが、どうして他人の家に無料で住む必要があるんですか」 「追い出されたんだよ、前のマンション」 「どうして」 「まあ、風紀の問題……的な?」 二階堂部長は、言葉を濁して、ひなニンニク串を口に運ぶ。 「なにやらかしたんですか、泥棒、放火?」 「アホか、法に触れるようなことじゃねえよ」 「じゃあ強姦未遂とか?」 「あのなあ、俺をなんだと思ってんの」 「紳士の皮を被った大噓つき」 「ああ、そうですか」 投げやりに酒を煽る部長に、質問を重ねる。 「で、なにやったんですか?」 嘘つき男に興味がある訳ではない。 弱味を握って、交渉を優位に進めたかったのだ。 グッと身を乗り出した私を片手で払いのけた彼は、渋々といった口調で答える。 「マンションの両隣と真上に住んでる女に手を出して、揉めたんだよ」 「は、3人も?」 「しょうがねえだろ、馬で大損ぶっこいて風俗行く金がなかったんだから」 ゲスの極み!! 人を身なりで判断してはいけません。 小学校の道徳で習ったけれど、この男は身なりに相応しい、本物のゲス男だ。
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