1123人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
「ご存知のとおり俺はクソ人間だ」
「は?」
「仕事も口先だけで適当にやってきたし、女遊びもまあ……人並みにそこそこは」
クソ人間の自覚はあるみたいだけど、女遊びは〝そこそこ〟ではなく〝ものすごく〟だと思う。
心の中で突っ込みながらも、下手に口を開くとなにをされるか分からないので、目だけで反論した。
それでもなんとなく私の意志は伝わったのだろう。類さんは大きく頷いた。
「信用できないのは分かる。俺がもしも女だったとしても、俺みたいなヤツには近づかない」
とても客観的な目をお持ちでいらっしゃる。
なんども首を縦に振って同意する私を見て、彼は財布を手に取ると「開けて」と渡してきた。
「え、いや……ひとさまの財布を開けるのは、ちょっと」
「片手がふさがっていて開けられない」
私を降ろせばいいじゃないの!
と言っても聞き入れてはくれないだろうから、素直に従う。
「中のカード、全部出して」
「なんなのよ」
文句を言いながら中身を出す。
クレジットカード、免許証、保険証、社員証――。それらに混ざって、見るからに怪しげな深紅のカードと、パステルピンクのカードが出てくる。
「それ……中、見てみ」
財布と他のカードをデスクに置いて、二つ折りになった深紅のカードを開く。
「スタンプカード?」
三十ほどあるマスの中に、薔薇のマークのスタンプが、残り一個を残して綺麗に並んでいる。
「なんですか、これ」
「風俗店のサービスカード」
「ぎゃっ――新手のセクハラですか!」
思わず手放したカードが、ヒラヒラと舞いながら床に落ちていった。
最初のコメントを投稿しよう!