初めましてこんにちは、どん底三十路女です

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*  電話に出なかった時点で、諦めればよかった。 二階堂部長の爽やかさに毒されて、柄にもないことをするべきじゃなかったんだ。 いくら後悔しても、もう遅い。 私の耳は、彼らの言葉を全て拾い上げてしまっているのだから。 「陽ちゃんたらあ、3日前に片付けてあげたばかりなのにいっ」 「悪かったよ……ほら、そんな可愛い顔で怒んなって」 「もうっ、可愛くないもんっ」 「いいや、凛はどんなに怒っても、世界一可愛いよ」 反吐が出そうだ。 心からそう思った。 本当は今すぐクローゼットの扉をけ破って、飛び出したい。 でも、出来なかった。 冷静な頭とは裏腹に、喉が閉まって声が出ず、体も震えて思うように動かないのだ。 そして事態は悪化する。 「やんっ、くすぐったいってばあ」 「凛、こっち向いて」 「っ……陽……ちゃん?」 まずい、本格的にまずい。 怪しいリップ音が聞こえる。 このまま放っておいたら、奴らは間違いなくおっぱじめるに違いない。 【サプライズ、驚かせようと、忍び込む、クローゼットで、地獄絵図】 字余り――、じゃないっ! 呑気に短歌をたしなんでいる場合ではない。 誕生日に、恋人と後輩のナニを盗み聞きするなんて、どんな拷問よ。 動けえ、私の体よ、動け! 両方の拳を握り締めたときだった。
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