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実家暮らしの私が帰宅すると、谷川家はやけに賑やかだった。
もしかして、お誕生日を祝ってくれるの?
よおし、ヤケ酒だ!
勢い込んでリビングに飛びこむと。
「あれ、お兄ちゃん、帰ってたんだ」
2年前に自分探しの旅に出た兄、海斗が、ソファーでふんぞり返っていた。
隣には、ギャルっぽい女の子。
「あ、七海さんすか? こんばんちわ」
ギャルが笑顔で立ち上がった。
「え……ええと」
戸惑う私に、ギャルは言う。
「あたし、早紀っていいます。海斗の嫁っす」
「は?」
「びっくりしました? あと、お腹の中に娘もいるんで、よろしくっす」
む、娘?
「ごめん、ええと……早紀ちゃん? 頭がついていかない」
倒れそうになった私を見て、母が笑った。
「七海ったら、相変わらず順応性がないんだから」
父がご丁寧に説明してくれる。
「つまりだな、自分探しに出たはずの放蕩息子が、嫁と娘を連れて帰って来たってことだ」
ワッハッハと豪快に笑う父は、蕩けそうな顔をしている。
さらには、早紀ちゃんの腹に向かって。
「べろべろばあ~、おじいちゃんでちゅよお」
とかやって、早紀ちゃんに「気が早いっす」と、たしなめられる始末だ。
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