ダルマさんが消えた

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 私は背後から聞こえる声に合わせ身体をじっと止め、次の合図を待った。明らかに人外の存在を感じ、心臓が握り潰されそうな感覚が伝わってくる。生きた心地がしないとはまさにこの状況を言うのだろう。  空間が徐々に変化をしていく。フローリングから不気味な花が開花をした。その毒々しい花は地に根を張り瞬く間に成長していく。長く強靭な蔦が絡み合い一本の抜け道を蹂躙していく。  そんな……  私はあまりの光景に唖然とした。掛け声が聞こえている際にしか動けない私は絶望感に苛まれた。  私が動けない間にも通路は徐々に狭くなっていく。早く通りたいのに…… 「ダルマさんが転んだ」 そういう時に限って掛け声のスピードが速まる。これじゃ数歩進めるかどうか、全く玄関に近づかない。もういっそのこと仕掛けて一気にゴールまでの距離を詰めないと……それに精神もそう長くは保ちそうにない。  そう思い止まりながらあれこれと考えていた時、背後からとてつもない異臭が漂ってきた。まるで生ごみを何日も捨てず腐らせたような腐敗臭が鼻を襲う。そして臭いは頭上に上がり目を刺激する。何もしてないのに涙が溢れてきた。臭いは激しさを増し、背中に突き刺さる視線が痛くなってきた。  その嫌な気配がまさに今すぐ後ろにいることが実感できた。そうこちらが止まっている間に唯は近づいて来ていたのだ。背後から激しい破裂音が響いたと思ったら後ろから手が……青白い手が私を羽交い締めに。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加