スケボーをする父

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 食事中、唯奈は終始無言だった。それがいつものことなのか治夫はあまり夕飯を共にしないので分からない。家のローンや車のローンのために働くつらさを少しでも分かってほしいと思うのはエゴなのか。  唯奈にしたらいきなり父に呼び出されその前に食卓を囲むのは拷問に近い。大好きなおでんの大根も味がしない。どうせ塾のことや成績のことだろうが父に何を言われても生活を改める気がしない。  夕飯を食べおえ治夫は唯奈に向かって微笑みかけてから立ち上がって二階へ行く。唯奈もごちそうさまをして階段をあがった。  書斎で父は立って待っていた。唯奈がどうしようか考えていると椅子に座るように促した。 「急に呼び出したりして悪かったな。こうして話すのは初めてだな」 「そうだね、お父さん殆ど家にいないから」 「中間管理職は色々と大変なんだ。唯奈は唯奈で大変だと思うが。塾に行かなくなったんだってな。成績が悪くなっているとか。理由があったら言ってくれ。お父さんと解決策を考えよう」 「別に理由なんてない。勉強が好きじゃないだけ」  唯奈はそう言って父の顔を窺った。眉根を寄せてなにか考えているようだ。 「好きじゃなくてもやっているうちに楽しくなることもあるんだよ」 「じゃあ、お父さん、スケボーやってよ」
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