スケボーをする父

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 お風呂に入って寝ようとしたときに父が帰って来た音がした。もう十一時だ。だいぶ飲んだのだろう。トイレに行くのを忘れていたので部屋を出ると父と母の話し声が聴こえてきた。 「今日もスケボーの練習をするの?」 「ああ、唯奈と約束したんだ」  少しして玄関の閉まる音がした。唯奈は部屋の窓から外の通りを見た。父がスケボーに乗って転んでは起き上がっていた。唯奈は暫く見ていたが眠くなったので布団潜り込んだ。  土曜日と日曜日は水戸が来ない。陽子は唯奈を買い物に誘ってみようと思った。水戸が来るようになってから少し唯奈は変わった気がする。誘ったら乗ってくれるかもしれないと思った。冬物の服も買ったほうがいいだろう。陽子は唯奈の部屋をノックした。 「唯奈、ちょっといい?」  返事がない。陽子はもう一度名前を呼んだ。 「なに?」  内側からドアが開いた。唯奈は不機嫌そうだ。陽子は失敗したと思った。でも一応訊いておこう。 「久しぶりにショッピングモールに行かない?」 「行きたくない。お母さん一人で行きなよ」  陽子は肩を落としてドアを閉めた。  水戸と勉強するときだけ教科書を開くが唯奈はパソコンでゲームをするとか漫画本を読むとかそんな生活だった。相変わらず勉強に意味なんか感じない。学校に友達と会いに行くのもだるくなってきた。それに通学の途中で三年生の先輩に絡まれてから通学路が怖い。
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