スケボーをする父

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 勉強は水戸が教えてくれているのだから学校に行かなくてもよいのではないか。唯奈の心にそんな思いが芽生えて次第に大きくなった。ある月曜日の朝、唯奈は頭痛を理由に学校を休むと言った。母は薬箱から頭痛薬を出した。 「熱はあるの? 病院へ行く?」 「熱もないし病院も行かないよ。寝てれば治るから」 「そう、じゃあ夕方の水戸先生も断ろうか?」 「薬を飲めば夕方までにはよくなるよ。断らないで」  仮病だし、水戸には会いたい。それに水戸に勉強を教わっている代わりに休むのだから断ったら元も子もない。父は黙って聞いていたが、「水戸先生には来てもらって頭が痛くなったら帰ってもらいなさい」と言ってソファから立ち上がりコートを羽織った。母は車のキーを持って玄関に行った。  唯奈は十分ほどテレビを観ていたが母が帰ってくると思ったので二階に行った。自室へ入ると一回読んだ漫画本をもう一度読む。  九時になると母はパートに出掛けて行った。母は近所の弁護士事務所で経理をしている。三時までなのでそれまで一人だ。唯奈は玄関に行って立てかけてある父のスケボーを見た。父はどんなに遅く帰っても表の通りでスケボーの練習をしているし、休日は体育館の外にある練習場へ行っている。父にこんなに根気があるとは思わなかった。
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