少しだけ大人になった日

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「おうちにはお母さんが居るじゃないか」  さっきお母さんに飼っちゃ駄目って言われてるのにやはり子どもよのぅ、涙を堪えながらお願いする姿はついつい飼っても良いよなんて言ってしまいそうになるけど、我慢我慢。 「お母さんはそれが大変だから、ちゃんと飼える人を探してもらったんでしょ?」 「…」 「お前たちの散らかしたおもちゃを片付けたり、ドタドタ騷ぐのを止めさせたりするのをいつも大変だって言ってるでしょ?」  もうひと息で泣くなぁコレ…。 「お母さんをもっと疲れさせたり大変にしたいの?」 「ちゃんと片付ける!」 「駄目、昨日遊んでたブロックも片付けてないでしょ?」  着替えを取りに行った時に子供部屋を覗いてて良かった、いつも生チョコ作ったりケーキを焼いたりしている甘い父親に頼めばなんとかなると思っていたのだろうか、絶対に飼わない、その事を覚ったのか表情がどんどん崩れていく。 「お父さんは犬の方が好きだからそんな事言うんだ、わ〜〜っ!!」  息子はそんな捨て台詞と共に部屋に走って行った、ガシャーン!とプラスチック製のブロックが吹っ飛んでいるような音がする。 「コラ!晩御飯だって言ってるでしょ」 「食えないだろ、良いよ俺が…あ、ラップしといて」  いくらなんでも、お願いを聞いてくれなかった両親と直ぐに楽しく晩御飯だなんて無理だろ、泣きながら食べてるのも虐待してるみたいでイヤだしな。  暴れん坊の娘もいつもとは違う雰囲気を感じたのか大人しくご飯を食べている。 「それで、いつ引取に来てくれるの?」 「あ〜明日の午前中には来れるみたい」 「そっか、良かった」  猫が引き取られる現場に居合わせたらま〜た号泣しそうだからな、まだまだ納得いってないみたいだし。  その日は娘もすんなりとお風呂に入った、息子もお風呂まだだと思うけど、ど〜しようかな、まだ泣いてるかな?娘の着替えを手伝っていると「お父さんちょっと来て」と息子が手招きしている「お着替え終わったらね」わざと冷たい返事をしても黙って着替え終わるのを待っていたので娘と一緒に子供部屋に向かった。
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