1 夢見堂

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 真っ赤な蝶ネクタイに青い燕尾服のようなスーツ姿で、でっぷりと太って立派な口髭を生やし、薄い髪をぴったり整えている。身長は、せいぜい小学生高学年くらいしかない、奇妙さ満タンの男がそこにいた。  拓人は、戸惑いを隠せないまま、その奇妙な男に視線を送った。 「失礼しました。何のことか、お分かりでないですよね。ご説明しましょう」  そう言って、男は説明を始めた。 「ここは、『夢見堂』といいます。夢見堂は、万人に夢を提供するという、それはそれは大事な役目を担っていて、いろいろな夢を保管して、訪れた皆様にご覧いただいている場所です。いわば、夢の本屋さんみたいな所と思ってもらえばよろしいかと思います。私は、この夢見堂の管理人です。決して怪しいものではありません」  拓人は、十分怪しいよ、という顔つきで、黙ったまま男を見つめた。
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