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「なかなか信じられない、というお顔ですね。もう少し説明しましょう。拓人さんを含めて、皆様が眠っているときに見る夢、あれは、実はこの夢見堂を訪れて、ここにある夢をご覧になっているのです。あなたの目の前にあるのが、夢の陳列棚です。といっても、お越しになる皆様は、意識だけしかありませんから、姿かたちは見えません。今も、あちらこちらにご覧になっている方がおられます」
男はそう言って、ようやく拓人の前に降り立った。そして話を続けた。
「ただ、大抵の方は、ご覧になると、そのまま手ぶらでお帰りになります。そういう場合は、眠りから覚めると夢は見たのに覚えていない、ということになります」
男の話は、さらに続いた。
「ところが、ときどき、見た夢を覚えていらっしゃる方もおります。その方は、この夢見堂から、有償で夢をお持ち帰りになった方です」
「えっ、有償? それってどういうこと?」
拓人は、思わず男に言葉を返した。
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