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「そんなに身構えないでくださいよ」
「だってまさかそんなものだとは思わなかったから……」
「一応用意はしておきましたけど、嫌なら無理しなくていいですよ。付き合ってるからって絶対しなきゃいけないことでもないですし」
やけに簡単に引き下がった。さっきもそうだ。いつもはもっと強引なのに。
(もしかしてさっきキスしなかったの、気にしてるのかな……)
「せっかくだし楽しい話しましょうよ。明日のことなんですけど、よかったら映画でも見に行きませんか? この前涼平さんがおもしろそうって言ってたやつ」
アレを箱に戻しながら恭臣くんが話題を逸らした。ものすごく気を遣わせてしまっているけど、でも嫌じゃないって言ったら……俺から誘うことになるよな。
(さすがにそれは勇気が……。せめてもっと……)
「……じゃあ明日は、デート、しよう」
恭臣くんが一瞬だけ驚いたあと嬉しそうに笑う。
「はい。他にも行きたいとことか、したいことないですか?」
「映画は俺のリクエストだし、恭臣くんは? 何したい?」
「なんでもいいんですか? それなら──」
恭臣くんがニヤリと笑った。絶対怪しい。
「待った、またなんか企んでるでしょ」
「えー? 信用ないなぁ」
「とりあえず明日出掛けるなら今日は早く寝ようよ。恭臣くん先にお風呂入ってきなよ」
「すみません。じゃあお風呂いただきますね」
恭臣くんがいなくなった部屋で独り考える。
(今日まだ1回も触ってきてない……やっぱり我慢してるのかな。いまさら恥ずかしがるようなことじゃないのはわかってはいるけど……)
鞄の陰に隠すように置かれた箱に目を向ける。
(どうしよう……)
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