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「あっ、よかった。風呂上がったら涼平さんいなかったんで心配──」
「恭臣くん、ごめん! それと、誕生日おめでとう!」
「……ありがとうございます。思い出してくれて嬉しいです」
頭を下げた俺の頭上から恭臣くんの声が聞こえる。嬉しい、の言葉とは真逆の暗く沈んだ声。
「……プレゼントとかも何も用意できてなくて、せめてケーキだけでもと思ったんだけどもうコンビニしか開いてなくて……」
「わざわざ買いに行ってたんですか?」
「今できること、それくらいしか思い付かなくて……。こんな大切なこと忘れるなんて本当にごめん。結婚してから毎日がイベントみたいで楽しくて、ずっと浮かれっぱなしですっかり頭から抜けてて……」
あぁ、ダメだ。こんなの言い訳にもならない。頭上げられない。恭臣くん今どんな顔してるだろう。
「今度必ず埋め合わせするから──」
「いいですよ、埋め合わせなんてしなくて。ケーキ、せっかく買ってきてくれたんですから食べましょう」
埋め合わせすらさせてもらえない。……でもそれだけひどいことしたんだから許してもらえなくて当然だ。
「あれ、1つだけですか?」
「うん、もうこれしか残ってなくて。あんまり誕生日ケーキって感じじゃないんだけど……」
「でも俺チーズケーキ好きなんで嬉しいです」
「……それならよかった」
こんな状況なのに、まだ俺のこと気遣ってくれてる。怒ってるだろうに、優しいな。
「……涼平さん、食べる前に少し話しませんか? 俺今あんまり余裕ないんで言葉選んだりできないかもしれないんですけど」
「え……?」
話って、まさか…………。
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