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なんでもない特別な1日を2人で
「涼平さん、明日って何か予定ありますか?」
これは最近の決まり事のようなもの。
約束したわけじゃないけど、休みの前の日は『明日何する?』って確認をするのが当たり前になっていた。
「んー、最近休みの度ずっと出かけてたじゃん? たまには家でゆっくりしない?」
2人で暮らすにあたって、使えそうな家具とかはそれぞれ前の家から持ってきてたりしてた。だけど実際に新生活が始まると2人で使うには不便だったり足りないものがあったりして、毎週のように買い物に行ったりとか忙しくしてたからたまには何もない休日を2人でのんびり過ごすのもいいなぁ、なんて思ってみたり。
「……そうですね。必要なものも大体揃いましたしね」
なんか思ってた反応と少し違う。今ちょっと変な間があったよな?
「もしかして何かしたいことあった? それなら──」
「いえ、特には。確かに最近ずっと忙しかったですし、そういうのもいいですね」
嬉しそうに笑ってる。俺の考え過ぎだったのかな。
お風呂も入り終わってまもなく日付が変わりそうな頃。
「俺もう寝ようかな。恭臣くんはどうする?」
「俺も寝ます。ね、今日は涼平さんのこと抱き締めながら寝てもいいですか?」
「今日は、じゃなくて今日も、でしょ。せっかく大きいベッド買ったのに広いって思ったことないんだけど」
照れ隠しでちょっと意地悪な言い方をする。でもこれくらいの些細な嫌味は恭臣くんには通用しない。
「……すみません。じゃあ今日はなるべく離れて寝ます」
「えっ、ちょっ、別に嫌なわけじゃないよ⁉︎ 変なこと言ってごめんっ」
「……本当に?」
「ほんとほんとっ! ほら、一緒に寝よ⁉︎」
今日の恭臣くんはちょっと変だ。付き合い始めてすぐぐらいの、ちょっとネガティブだった頃に似てる。
俺、また不安にさせるようなことしちゃったのかな。でも思い当たるようなことは何も──。
ちゃんと訊いた方がいいかな、とは思うけどもう遅いし、とりあえず明日改めることにしよう。
ベッドに入ると宣言通り恭臣くんが俺をそっと抱き締めて、そしておやすみなさい、っておでこに軽くキスしてくれた。
いつもとは違ってまるで壊れ物を扱うように、優しく俺の頭を撫でる。それだけで本当に大切にしてくれてるのが伝わってくる程に。
怒ったり落ち込んでるって感じじゃないし、やっぱり気にし過ぎだったのかも。
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