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「涼平さん、そろそろ起きて。もう昼になっちゃいますよ」
恭臣くんの声で目が覚める。頭を撫でられながら寝たのが心地よくて、いつもより長く寝ちゃったみたいだ。
「おはようございます。朝飯できてますよ」
「恭臣くんもう起きてたんだ、早いね」
「はは、俺が早いんじゃなくて涼平さんが遅すぎるんですよ。いくらゆっくりって言ってもただ寝て過ごすのももったいないじゃないですか」
顔を洗ってからテーブルへ。目の前の美味しそうなご飯にテンションが上がる。でも俺がただ寝てる間に恭臣くんにだけ働かせちゃって、少し罪悪感。
「今日晩飯どうします? あとで買い物行こうかと思ってるんですけど」
「今朝ご飯食べてるのにもう夜ご飯の話? 何がいいかなぁ」
「たまには外で食べますか?」
「うーん、俺は家の方がいいな。恭臣くんのご飯の方が美味しいし人目気にする必要もないし……あっ、でも毎日ご飯作るの大変だろうし外でも──」
「いえ、全然。そんなに喜んでくれてるならむしろ作りがいあるんで。それにひとに見られてたらできないことしたい、なんて言われちゃったら──」
「待って⁉︎ そんな言い方してないでしょ⁉︎」
「えー? そうとしか聞こえなかったですけど」
慌てて俺が否定するととぼけた顔で恭臣くんが答えた。伝言ゲームだってこんなに意味が変わって伝わることないと思う。
「……ご飯食べてるのに変なこと言わないでよ……」
「涼平さんが先に言ったんじゃないですか」
「そういう意味で言ったんじゃないってば。でも気付いたらこういう話になってる時あるじゃん? 外でも出ちゃったらって思って変な気使うっていうか……」
「……すみません、気を付けます。多分9割方俺のせいなんで」
「9割? 10割の間違いでしょ」
「言い出すのは俺だと思うんですけど、きっかけ作ってるのは涼平さんじゃないかなー?」
「恭臣くんが勝手にそう思ってるだけだよ」
こうやって話が変な方向に行っちゃった時に俺がちゃんと止めないからいけないのかな。……でもなんだかんだ俺も楽しんでるから、確かに俺にも1割くらい原因はあるかもしれない。
そういえば起きたら昨日のこと訊くつもりだったけど、楽しそうにしてるしやっぱり思い過ごしだったかな。いまさら蒸し返す必要もなさそうだ。
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