なんでもない特別な1日を2人で

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 洗い物を終えた恭臣くんが外行きの服に着替え始めた。 「俺そろそろ買い物行ってきますね。何か欲しいものとかありますか?」 「大丈夫だよ。どのぐらいで帰ってくる?」 「えーと、買い物ついでにちょっと用事済ませようと思ってるので2時間くらいですかね」 「そんなにかかるの? なんの用事?」 「ちょっと野暮用で。なるべく早く帰れるようにはするので、涼平さんはゆっくりしててください」 「わかった、気を付けてね。いってらっしゃい」 「いってきます」  いってきます、とかおかえりなさい、とか、こういうちょっとした時に本当に一緒に暮らしてるんだって実感するっていうか、本当に幸せだなって思う。  前よりも一緒にいる時間が増えて、でも飽きるどころかもっとずっと一緒にいたくて、1人ってこんなに寂しかったっけ。 (一緒に行けばよかったかな……。でも約束だしな……)  引っ越してすぐぐらいに約束したことがある。近くのスーパーとか、日常の買い物はなるべく1人で行くこと。  俺は気にしないって言ったけど、不特定多数の目に触れて変な噂でも立ったら俺に迷惑がかかるって。そういうの気にしなくていい世の中になればいいのにな。  ゆっくりしたいって言ったのは間違いないけど、1人じゃ意味がない。恭臣くんと一緒にのんびりしたかったのに。 (早く帰ってきてって連絡してもいいかな? でも用事って言ってたし急かしたら悪いよなー)  思いの外やることがない。使った食器も片付けてあるし、俺が寝てる間に洗濯も終わってたみたいだ。  ……もしかしてっていうか、もしかしなくても俺なんの役にも立ってないし恭臣くんの負担になってるんじゃ……。 (このままだと本当に愛想尽かされそう……。もっとちゃんとしよう)  それから少しした頃恭臣くんからメッセージが届いた。もうそろそろ帰ってくるらしい。わざわざ連絡よこすなんて珍しいな。  恭臣くんの帰りが待ち切れなくて玄関近くで待つ。外から聞こえてくる足音が家の前で止まってドアが開いた。
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