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夕食が始まって、恭臣くんの箸の動きをドキドキしながら見つめていた。
「どう? 食べられそう……?」
「すっごい美味いです。最高」
「よかったぁ。結局ほとんど恭臣くんにやってもらったようなもんだから絶対大丈夫だとは思ったけど」
「そんなことないですよ。切るのも焼くのも味付けも、全部自分でやったじゃないですか」
「その都度恭臣くんに指示出してもらいながらね。これで俺がやったって言えるかなぁ」
お世辞も少しはあるかもしれないけど、喜んでくれてるように見えた。やってみてよかったな。次は自分でできるように、言われたこと忘れないうちにメモしておこう。
夕食後の皿洗いは今日は俺がやる。これも順番とか決めてるわけじゃないけど、どちらかだけに負担がかかりすぎないように、その都度話しながら決めるようにしてる。
片付けの後、ソファーに座ってる恭臣くんの隣に座る。恭臣くんが俺に近寄るように座り直した。
黙ったままの恭臣くんが落ち着きなく掌を擦り合わせたり指を動かしたりしてる。なんかちょっとソワソワしてるみたいだ。どうしたんだろう?
今日結構いい雰囲気だったし……明日も休みだから、もしかして……なんて、マジメに考えたら恥ずかしくなってきた。
(……なんで何も言ってこないんだろう……)
あれから恭臣くんも俺も一言も発しないまま、時間だけが過ぎていった。
「……あの、涼平さん、ちょっといいですか?」
「なっ、何? どうしたの?」
「その、今日がなんの日かって……」
「今日? なんかあったっけ?」
「…………いや、なんでもないです。俺先に風呂入ってきます」
……なんだ? なんであんな暗い顔して……。俺もしかして何か大切なこと忘れてる? あれ、今日って何日だ……?
あ──。
ヤバい、急がないと。今日が終わる前に。
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