なんでもない特別な1日を2人で

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 立ち上がった恭臣くんが椅子を持ち上げる。それを移動させると俺の隣に並ぶように座り直した。 「……え?」 「1つだけ約束してください。来年は絶対忘れないって」  来年──。 「……いいの?」 「はい? 何がですか?」 「だって……埋め合わせいらないって言ってたから、別れる気なのかなって……」 「バカ言わないでください、そんなわけないじゃないですか。あれはいつまでもくだらないことにこだわる俺のせいで涼平さんに気を遣わせたくなかっただけで……逆に悩ませたみたいですみません。あぁ本当今日余裕ないな、俺……」 「そんなに楽しみにしてたんだしくだらないことなんかじゃないよ……本当にごめん」 「ねぇ涼平さん、ちょっとだけ俺のお願い聞いてくれませんか? 今日も楽しかったって思って終われるように」  椅子から軽く腰を浮かせて、テーブルの向かい側にあるケーキを引き寄せながら恭臣くんが言う。 「俺にできることなら……」  そして無言でフォークを俺に差し出した。思わず受け取っちゃったけど、なんで俺に? 「ケーキ、あーんして食べさせて?」 「うぇっ……⁉︎」  そんな恥ずかしいお願い……いつもだったら断るところだけど、今日はそういうわけにはいかない。 「……わかった。はい、あーん……」  ケーキを乗せたフォークを恭臣くんの口元に運ぶ。 「はは、あっま。今まで食べたケーキの中で一番甘いです」  よかった、恭臣くんが笑ってくれた。恥ずかしいけど喜んでくれてよかった。
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