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とある休日の昼下がり、涼平のスマホに懐かしい人物からのメッセージが届いた。
「えっ、ウソ⁉︎」
「どうかしたんですか?」
並んでソファーに座る涼平の叫び声に驚いた恭臣が問う。その恭臣の不安そうな表情を吹き飛ばすように、笑顔の涼平が恭臣を見上げながら声を弾ませた。
「同じサークルだった友達が結婚するんだって。大学の時からずっと付き合ってたんだけどようやくかぁ。それで来月サークル仲間でお祝いするらしいんだけど、行ってきてもいい?」
「もちろん。地元戻るんですか?」
「ううん、こっち出てきてる人も多いから。家から電車で数駅のとこ」
「サークルって何やってたんですか?」
「映画研究会だよ」
「へぇ、映画撮ってたんですか?」
初めて聞く涼平の新たな一面に、恭臣は興味津々に食い付いた。
「ううん、うちは見る専門。何人かで集まって映画館行ったり、レンタルの古い映画見たりするだけの緩いサークルだよ」
「それって女の人もいたんですか?」
「半々くらいかな……ってまた変なこと考えてる?」
恭臣から次々に繰り出される質問。その1つ1つに素直に回答する涼平だったが、それまでとは意図が変わった問いに怪訝そうな顔を向けた。
「だって同窓会とかで久々に会って、ってよくあるパターンじゃないですか。涼平さんに限っては大丈夫だと思ってますけど、向こうがどう来るかわかんないんで気を付けてくださいね?」
「もー、そんな心配いらないから」
恭臣の心配をよそに呆れ顔をした涼平がそっぽを向きながら答える。
「涼平さん隙が多いから……潰れるまで飲んじゃダメですよ? それからトイレとかで席を立って戻ってきたら飲みかけのグラスがあっても──」
「ちょっと待って、それってお酒に睡眠薬混ぜて、ってやつでしょ? そんなことする人達じゃないし、それに俺男だよ?」
「もちろん知ってます。でも涼平さんを狙ってる人にとったら男も女も関係ないですよ」
「……やっぱり行かない方がいい?」
俯く涼平の浮かない顔に恭臣の心臓が跳ねる。気まずそうに、恭臣は涼平から目を逸らした。
「あ、いや……。すみません、こんな束縛するみたいな……」
「心配してくれてるんだろうけどさ、でも本当に大丈夫だから。……それに俺が好きなのは恭臣くんだけだから安心して」
照れくさそうに、軽く頬を染めた涼平が恭臣の手に触れる。恭臣はその手を握ると軽く引き寄せながら唇を重ねた。
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